The World Will Tear Us Apart 『Let's Get Lost』制作ノート - 6.「Future No Future」
のんびり続けてきたアルバム制作ノートも折り返し、6曲目の「Future No Future」です。
この曲も実は昔からある曲で、Sunday と同時期の2011年頃には存在していました。当時京都/大阪を中心にギターポップ/シューゲイザー周辺のシーンが盛り上がりを見せており、我々も(主に谷井さんが)その影響を受けていました。(Chelsea Girl Apartment、Pastel Blue など… このあたりの経緯についてはEPリリース当時のインタビューが詳しいです。)同系統の「Yeah」という曲もあったと思います。
スリーピース編成、谷井さんボーカル時代のライブ。
その後國府さんが加入してからはこの曲が唯一の國府さんボーカル曲となりました。アレンジ面での試行錯誤は続き This Charming Man っぽいモータウン風のリズムで演奏していた時期もあった気がします。しばらくセットリストに留まっていたものの、ライブが完全にドラムレス編成になってからはしばらく姿を消します。
時は流れ2016年、私が過去のライブ音源を聴き返していたところこの曲を再発見し、ドラムレス・ベースレスの編成でライブ演奏するためにデモを打ち込みました。『Let's Get Lost』収録曲のリズムトラックに関しては「S.O.S.」以外は基本的に富永が打ち込んでいるのですが、この曲のリズムとシンセベースのトラックは私が打ち込んだデモのものがほぼそのままアルバム・バージョンに採用されています。(曲の後半からは富永がトラックにディレイをかけて展開を作っています。)
リズムは満を持して(?)バンド名を回収すべく Joy Division を、シンセベースは Suicide をそれぞれ意識しています。「バンドっぽいサウンドをシンセとリズムマシンの音でやる」「ハイハット禁止」が個人的なテーマでした。
オリジナルバージョンの歌詞に Pixies へのオマージュ(「世界を騙せ」)があり、それに触発されてギターも Pixies のようなオルタナティヴ経由のサーフロックっぽいサウンドを目指しました。(アルバム版ではその箇所の歌詞は変更されてしまっていますが…。)
曲を通して鳴っているシンセのパッドっぽい音はギターのコードストロークにDAW上でピッチシフトとリヴァーヴ、フィルターをかけて作っています。この手法はけっこう上手く行ったので HAPPYEND でも採用しています。
國府さんのヴォーカルはピッチのぶれが味でもあるので処理に悩んだのですが、ここではピッチ補正をしたトラックと処理前のトラックをミックスすることで疑似ダブリングっぽい効果を作っています。
2020年2月8日のリリースパーティ東京編では國府さんを含めた編成での演奏がひとまず最後ということもあり、特典音源としてこの曲のセルフ・リミックスバージョンを配布しました。こちらはライブでサポートも務めてくださった mukuchi を始めとする tiny pop 周辺のアーティストに影響を受けたアレンジになっています。
Future No Future(New Age Mix) pic.twitter.com/2ihwXgSgXf
— sho_hashi (@sho_hashi) 2020年2月7日
(当初アルバムのマスタリングは tiny pop コンピレーションの監修もされている feather shuttles forever の hikaru yamada さんにお願いしていたのですが、バンド側の都合によりスケジュールが合わなくなってしまい最終的にリリースされたものは阿部利幸さんによるマスタリングとなっています。hikaru yamada さんがアルバムの中で気に入って下さった曲が Future No Future でした。本当に申し訳ないです…。)
次回は7曲目、 Let It Snow についてです。