The World Will Tear Us Apart 『Let's Get Lost』制作ノート - 10.「HAPPYEND」
1年以上にわたりのんびりやってきたアルバム全曲解説シリーズもついに最終曲です。
HAPPYENDはアルバム収録曲の中では最も古い曲で、この曲の前身は2009年の結成当初から演奏していた「君時雨」という曲です。現在の我々のループ主体な作風とは真逆のやたら展開の多いプログレ曲でした。
2011年ごろ、バンドの方向性がポップ路線にシフトしていく中で「君時雨」のリフをリサイクルする形で「HAPPYEND」が誕生します。その前に「She Prays」というタイトルだった時期もあった気がしますがもはや思い出せません。この頃から昔の曲をこねくりまわしていたんですね。
國府さん加入後はコーラスが加わり SUPERCAR っぽさが増します。ちなみに國府さん加入時に試しにスタジオで合わせた曲は SUPERCAR の FAIRWAY と Pixies の Gigantic でした。
國府さんがギターを弾いている時代のレア動画(もともとはギター/コーラス担当として加入してもらったのでした…。)
この時のアレンジに近い形でバンド初のレコーディングを行い、ファースト・シングルとしてリリースすることになります。当時流行っていた(?)ダウンロード・コード付ステッカーという形でライブ会場で販売していました。ミキシングは富永。ライブではドラムセットを叩いていましたが音源は打ち込みのドラムになっておりその後の方向性を予感させます。よく聞くとグロッケンの音も入っていますね。
サビのドロップDチューニングのギターリフは Smashing Pumpkins の影響だった気がします。イントロのフレーズが最後のサビで戻ってくる展開は好きなのでよくやってしまいます。
その後、ドラムレス・ベースレスの編成でライブを行うようになった際に、BPMを落とした浮遊感のあるアレンジになりました(アルバム版とも別の、ややシューゲイザー寄りのアレンジ) 。
アルバム版では最終曲ということで他の収録曲とはやや雰囲気の違う曲調となっています(S.O.S. 〜 Teenage Jesus and Casualties がひとつのループで HAPPYEND はその外側のイメージ)。直接のレファレンスは『Paracosm』期の Washed Out で、チルウェイヴの逃避的なイメージはアルバムタイトル『Let's Get Lost』にも繋がっています。歌詞もシングル版から一部変更されてアルバムの締め括りに相応しいものになっています。
このバージョンはリズムトラックを富永がアナログリズムマシンで打ち込み、それをベースに私がデモを作りアレンジを固めました。スティール・パンは打ち込みではなく小型のパンを國府さんが叩いた生音を録音しています。イントロから鳴っているパッドのような音は Future No Future と同じくギターのコードストロークにDAW上でピッチ・シフトと深いリヴァーヴ、フィルターをかけて作っています。
サックスは 吉本“レッサー”顕之 くん。メインのフレーズはシングル版でエレキベースが弾いていたフレーズをなぞっています。サビの裏メロとアウトロのソロは完全にレッサーくんのアドリブで、ソロの途中でフェードアウトさせる贅沢な使い方をさせてもらっています。(実際には倍くらいの尺で吹いてもらってます。)彼のサックスなくしてはこの曲もアルバムも完成しなかったでしょう…。
本日のゲスト #TWWTUA_recording pic.twitter.com/VtXkD1PGgI
— sho_hashi (@sho_hashi) 2018年2月4日
レッサーくんにはライブでも一度サポートで参加してもらい、サックス入りの Teenage や S.O.S. も素晴らしい出来だったのですが、録音が残っていないことが悔やまれるのでいつかリベンジしたいです。
---
アルバム全曲解説、最後までお付き合いいただきありがとうございました。リリースから1年以上が経過した今もコロナ禍でツアーが行えず満足にプロモーションが行えないもどかしさもありますが、この記事が『Let's Get Lost』を楽しむきっかけになると嬉しいです。
現在 The World Will Tear Us Apart は新曲を制作中です。相変わらずマイペースな活動ではありますが、今後の動向もチェックしていただけますと幸いです。それでは。