The World Will Tear Us Apart 『Let's Get Lost』制作ノート - 5.「When She Sleeps」

本日は5曲目、The World Will Tear Us Apart のダーク・サイドを代表する1曲「When She Sleeps」について。

 

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この曲は2012年頃、「こどもの国」の次に形になった曲です。当時の谷井さんのコンテンポラリーな R&B(とりわけ Rihanna)への心酔っぷりが強く反映されている曲だと思います。この頃のライブでは入場SEとして影響を受けたトラックを流すことが多くなり、When She Sleeps 初披露直前のライブではこの曲を流したりしていました。

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セッションでの仮タイトルは「ケミストリー」。これは私が言い始めたような気もしますが、おそらくこの曲の2step的な刻みのことを指していたものと思われます。

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当時のライブはラップトップ、シンセ2台、ギターの編成で、この頃から横一列に並ぶスタイルが基本になりました。

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この曲も「こどもの国」同様ボツになったレコーディング・セッションがあり、仮ミックス版を SoundCloud で聴くことができます。こちらはアルバムバージョンよりもベッドルーム感が強い仕上がりになっています。イントロの忍び寄るようなSEは部室にあったシュレッダーのモーター音をサンプリングしていくつかのエフェクトをかけたもので、当時のプログレ精神の賜物です(?)この部分はアルバムバージョンでもそのまま採用しています。

 

アルバムバージョンではコーラス部分の主旋律が追加され、ヴァースの歌詞とメロディも変わっています。『Let's Get Lost』収録曲の歌詞には一人称がほぼ使われていないのですが、この曲にだけ「僕」が登場するのは何故か谷井さんに尋ねたところ敢えてそうしていると言われた記憶があります。(真相は本人の口から語られる…かもしれません。)

イントロのブレイク後から左チャンネルで鳴っているリバーブのかかったギターは谷井さんによるものです。こういったフレーズが入るだけでインディ感が一気に増すのでいつも感心してしまいます。(私は何でもスタジアム・ロックにしたがってしまうので…。)國府さんによるエレピのフレーズも印象的です。

ヴァース部分は谷井・富永、コーラス部分は谷井・國府のボーカルがそれぞれ対等に聴こえるようミックスしています。 The World Will Tear Us Apart は男女ツインボーカルと言われることが多いのですが、本当はトリプルボーカルバンドなのだという気持ちをミックスに込めています。

2:08ごろに入るカッティングは言うまでもなく「ラヴ・ストーリーは突然に」(Chill in the Rain の項を参照)。

間奏のゲートのかかったファズ・ギターは Fuzz Factory のコピーを使っています。私と富永は  高校時代から一緒にバンドをやっていたのですが、このエフェクターはそのときのベーシストだった吉田くんが自作してくれたものです。歴史が刻まれている…。

 

この曲は 「S.O.S.」 に続くアルバムからの先行リリース曲となり、アートワークも担当してくれた高石瑞希さんによるミュージック・ビデオが公開されています。高石さんのビデオは Ribet Townsベランダギリシャラブ などのビデオで見られるカラフルな紙芝居調のアニメーションが持ち味なのですが、ここでは写真をトレスした線画によるモノクロの映像で楽曲の持つダークな世界観が表現されています。私は2分20秒あたりの演出がハッとさせられて好きです。高石さんは我々以上に我々がどのようなバンドかを理解してくれている気がします。

www.mizukitakaishi.com

 

 次回は唯一の國府さんメインボーカル曲「Future No Future」です。